毎朝日

水俣病「今も被害ある前提でない」→「言葉過ぎた」 環境省担当室長

水俣病の患者・被害者団体に「健康調査」の説明をする環境省幹部ら=2025年4月9日、熊本県水俣市、今村建二撮影
水俣病の患者・被害者団体に「健康調査」の説明をする環境省幹部ら=2025年4月9日、熊本県水俣市、今村建二撮影

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2009年にせんきゅうねん施行の水俣病みなまたびょう被害者救済法きゅうさいほう特措法とくそほう)でされ、環境省かんきょうしょう25年度にじゅうごねんど着手ちゃくしゅする「健康調査けんこうちょうさ」について、特殊疾病とくしゅしっぺい対策室のもり室長しつちょうが「いままだまだ被害あるという前提ぜんていっていない」と発言はつげんした。同省が調査手法ちょうさしゅほう方針ほうしんまとめまとめたことをけた3月末さんがつまつ朝日新聞あさひしんぶん取材しゅざいたいして述べのべた。

調査ちょうさ手法しゅほうなどについて、くに研究けんきゅう機関きかん識者しきしゃらへの取材しゅざい重ねるかさねるうえで、4がつ下旬げじゅん室長しつちょう発言はつげん趣旨しゅし改めるあらためる問うとうと「『被害ひがいがない』という意味いみではなかった」と釈明しゃくめいし、今後こんご行うおこなう調査ちょうさ被害ひがい有無うむ調べるしらべるものではない、との趣旨しゅしだったと説明せつめいした。

一連いちれん発言はつげんについて、被害者ひがいしゃ団体や識者しきしゃらは「現地げんちまわれば、救済きゅうさい取り残とりのこされたひとがいるのは明らかあきらか」「被害ひがいつぶつぶり、『幕引まくひき』をはかろうとしている」と批判ひはんしている。

対策室たいさくしつ環境省かんきょうしょう水俣病みなまたびょう問題の責任せきにん部署で、室長しつちょう施策しさく立案や被害者ひがいしゃ団体との調整ちょうせいなどを幅広はばひろになう。24ねん5がつ環境相かんきょうしょうとの懇談こんだんで、被害者ひがいしゃ側の発言はつげん省職員しょうしょくいんさえぎる「マイクオフまいくおふ」問題がきたさい進行役しんこうやく当時とうじ室長しつちょうで、その異動いどうになった。その後任こうにんとして、どう7がつ森氏もりし就任しゅうにんした。今回こんかい取材しゅざいでのやり取りやりとり以下いか通りとおり

3がつ28にちにち

――環境省かんきょうしょう25年度にじゅうごねんど着手ちゃくしゅする「健康調査けんこうちょうさ」は、「被害ひがい広がりひろがり捉えるとらえる」ことを目的もくてき置いているおいているのか

我々われわれとしては「地域ちいき健康けんこう状態じょうたいニュートラルにゅーとらる評価ひょうかする」のが目的もくてき特措法とくそほうなどの政治せいじ解決かいけつで、5万人ごまんにんという規模きぼ救済きゅうさいがされてきたなかで、そのあと確認かくにんというところところあるある

そのとき特措法とくそほう救済きゅうさい措置)の目的もくてきとして「あたうあたう限り」(できるできる限り)救済きゅうさいするというところところをやってきたので、「被害ひがいいままだまだあります」という前提ぜんていっているわけわけではない。行政ぎょうせいかたから、なかなかなかなかそれ以上のことこと救済きゅうさい)はむずかしいのかなとおもっている。

――団体だんたい側が求めもとめているのは全容ぜんよう解明かいめいだ。そのさきには潜在せんざい被害の掘り起こしほりおこし救済きゅうさいにつなげたいという思いおもいがある。

特措法とくそほう調査ちょうさ目的もくてきとして、「被害ひがい広がりひろがり把握はあくする」とかれていない、というのは事実じじつとしてあるある目的もくてき沿岸えんがん地域の健康けんこう状態を把握はあくすることだ。ただ、それは(被害ひがい広がりひろがり把握はあくと)かさなる部分ぶぶんあるあると思う。

4がつ25にちにち

――先日せんじつ取材しゅざいで「被害ひがいがあるという前提ぜんていっていない」との発言はつげんがあった。環境省かんきょうしょうとして政策せいさく的にそのような整理せいりなのか

ちょっとちょっと言葉ことば過ぎすぎたかもしれない。特措法とくそほう趣旨しゅしとして、あたうあたう限りかぎり救済きゅうさいしたという経緯けいいがあった。そのうえで、健康けんこう調査ちょうさをする目的もくてきなにか、というときに「被害ひがいがあるかないか」を調べしらべるというよりは、地域ちいき健康けんこう状態じょうたいニュートラルにゅーとらる評価ひょうかする、という意味いみ。「被害ひがいがない」ということを言っいっつもりつもりではなかった。正確せいかく申しあげるもうしあげると、被害ひがいがあるかどうかは分からわからない。

――あたうあたう限りの救済きゅうさいえ、「漏れもれなく救済きゅうさいした」という意味いみではないのか

結果けっか的に(被害ひがいが)れているのか、れていないのか、という判断はんだんをしているわけではない。そこそこからない。

訴訟そしょうされたりされたりとか、被害ひがい訴えているうったえているいらっしゃるいらっしゃるというのは認識にんしきしている。ただ、それが被害ひがいなのかどうかは分からないわからないいろんないろんな分からないわからない」があるある

――環境省かんきょうしょうがこれから行う調査ちょうさは(メチル水銀めちるすいぎん曝露ばくろのない)「対照地域たいしょうちいき」と、曝露ばくろたかかった地域ちいき、その周辺しゅうへんを「集団比較しゅうだんひかく」する手法しゅほう。その結果けっかのこされた被害ひがい存在そんざい浮かび上がるうかびあがるってきたなら、救済策きゅうさいさく講じるこうじるのか

結果けっかていない現時点げんじてん申しもうあげるのはむずかしい。比較ひかくしてかりあるあるとしても、どれくらいどれくらいなにあるあるのか。まずまずそのその評価ひょうかしてしていくのが大事だいじだ。

Vocabulary

Word (Furigana)JLPT LevelPart of SpeechMeaning
施行 (しこう)N2nounenforcement
被害者 (ひがいしゃ)N2nounvictim
救済 (きゅうさい)N2noun, suru verbrelief, rescue
調査 (ちょうさ)N3noun, suru verbinvestigation
特殊 (とくしゅ)N2adjective (な-adjective)special
発言 (はつげん)N2noun, suru verbstatement
釈明 (しゃくめい)N1noun, suru verbexplanation
批判 (ひはん)N2noun, suru verbcriticism
担う (になう)N2godan verbto bear, to carry
懇談 (こんだん)N2noun, suru verbinformal discussion
着手 (ちゃくしゅ)N2noun, suru verbcommencement
明らか (あきらか)N2adjective (な-adjective)clear, obvious
掘り起こす (ほりおこす)N2godan verbto excavate, to uncover
把握 (はあく)N2noun, suru verbgrasp, understanding
重なる (かさなる)N2godan verbto overlap
整理 (せいり)N2noun, suru verbarrangement, sorting
評価 (ひょうか)N2noun, suru verbevaluation
漏れる (もれる)N2ichidan verbto leak, to escape
認識 (にんしき)N2noun, suru verbrecognition
存在 (そんざい)N2noun, suru verbexistence
対照 (たいしょう)N2noun, suru verbcontrast
集団 (しゅうだん)N2noungroup
比較 (ひかく)N2noun, suru verbcomparison
目的 (もくてき)N3nounpurpose
状態 (じょうたい)N2nounstate, condition
潜在 (せんざい)N2adjective (な-adjective)latent, potential
進行 (しんこう)N2noun, suru verbprogress, advance
余地 (よち)N2nounroom, space
可能性 (かのうせい)N2nounpossibility
立案 (りつあん)N2noun, suru verbplanning
目をつぶる (めをつぶる)N2expressionto turn a blind eye
述べる (のべる)N2ichidan verbto state, to mention

Grammar and Sentence Structure

  1. Sentence: 「被害が今もまだあります」という前提に立っているわけではない。

    Grammatical Points:

    • 「わけではない」 is a phrase used to indicate that something is not the case or to deny a certain assumption. It adds a nuance of clarification or correction to a previous statement.
    • 「前提に立っている」 means “to stand on the premise” or “to assume.” It indicates the basis or foundation of an argument or statement.

    Structure:

    • The sentence can be broken down as follows:
      • 「被害が今もまだあります」 (There is still damage)
      • 「という前提に立っている」 (is not the premise)
      • 「わけではない」 (is not the case)
    • Overall, the sentence conveys that the speaker does not assume that there is still damage.
  2. Sentence: 特措法で調査の目的として、「被害の広がりを把握する」と書かれていない、というのは事実としてある。

    Grammatical Points:

    • 「として」 is used to indicate a role or function, in this case, referring to the purpose of the investigation.
    • 「書かれていない」 is the passive form of the verb 書く (to write), meaning “is not written.”
    • 「というのは」 is a phrase used to introduce a statement or fact, often used to clarify or explain something.

    Structure:

    • The sentence can be analyzed as:
      • 「特措法で調査の目的として」 (As for the purpose of the investigation in the special measures law)
      • 「「被害の広がりを把握する」と書かれていない」 (it is not written that “to grasp the spread of damage”)
      • 「というのは事実としてある」 (is a fact)
    • The sentence asserts that it is a fact that the purpose of the investigation is not stated in the special measures law.
  3. Sentence: 結果的に(被害が)漏れているのか、漏れていないのか、という判断をしているわけではない。

    Grammatical Points:

    • 「結果的に」 means “as a result” or “ultimately,” indicating the conclusion drawn from previous actions or statements.
    • 「漏れている」 and 「漏れていない」 are the present continuous and negative forms of the verb 漏れる (to leak or to be omitted), respectively.
    • 「という判断をしているわけではない」 indicates that the speaker is not making a judgment about the situation.

    Structure:

    • The sentence can be broken down as:
      • 「結果的に(被害が)漏れているのか、漏れていないのか」 (Whether the damage is omitted or not)
      • 「という判断をしているわけではない」 (is not making that judgment)
    • The overall meaning is that the speaker is not making a determination about whether damage has been omitted or not.

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