毎朝日

卒業式式辞での「申し訳ない」 校長が目指した、居心地のいい学校

卒業生の胸につけられた花飾り=2024年3月19日午前、東京都豊島区
卒業生の胸につけられた花飾り=2024年3月19日午前、東京都豊島区

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取材しゅざいを含め、卒業式そつぎょうしきには30かい近く参加さんかしてきた。だが、校長先生こうちょうせんせい子供こどもあやまった式辞しきじいたのははじめてだ。

東京都とうきょうと豊島区としまくたち西池袋にしいけぶくろ中学校ちゅうがっこうまえ校長こうちょう佐藤さとう高彦たかひこさん(62)。今年ことし3がつ校長こうちょうとして最後さいご卒業式そつぎょうしき式辞しきじでこうかたりかけた。「卒業生そつぎょうせい全員ぜんいんがここにいるわけではありません。今日きょう午後ごご卒業式そつぎょうしきひらきます。だれのこさない学校がっこう、みんなが居心地いごこちのいい学校がっこう目指めざしたけれど、3ねん(の在任期間ざいにんきかん)はみじかかったなあ。力不足りょくぶそくだった、もうわけない」

念頭ねんとうあったあったのは不登校ふとうこう生徒せいとたちだ。コロナころなて、同校どうこうでは不登校ふとうこう生徒せいとえていた。集団しゅうだんなじなじめなかったり私立しりつちゅうから転校てんこうしてきたりと、理由りゆう様々さまざま

午後の卒業式そつぎょうしきは、教室きょうしつはいりづらい生徒せいとのためにひらく。佐藤さとうさんは「『みんなみんな居心地いごこちのいい学校がっこう』を約束やくそくしたのにたせなかった。もうわけなかったと、このにいない生徒せいとにもあやまりたかった」とう。

何もしなかったしなかったわけではない。同こうには昨春さくしゅん学校がっこう居場所いばしょにしまるーむにしまるーむ」ができた。カーペットかーぺっとの上にローテーブルろーてーぶるかれ、かたわらにはテントてんとも。ものボードゲームぼーどげーむもある。しゅう1~3かい午後ごご1半~3教室きょうしつはいりにくい生徒せいとが、午後ごご3半~545ぷんだれもが利用りようできる。

地元NPOえぬぴーおー豊島としまどもWAKUWAKUわくわくネットワークねっとわーく」との共催きょうさいで、NPOえぬぴーおー職員しょくいんスタッフすたっふとしてはいる。利用りようしたことのある女子じょし生徒せいとは「教室きょうしつでちょっといやなことわれたー、とか愚痴ぐちってスッキリすっきりできる」。

当初とうしょ、関係者からから様々さまざまこえあったあった。例えば「学びまなびと、憩いいこいけるべきべきだ」「なに問題もんだいこったら、多忙たぼう教員きょういんさらにさらにいそがしくなるのでは?」といった意見いけんだ。

どうこたえたのか。「全国ぜんこく的に不登校ふとうこうえている状況じょうきょうをみると、どもを学校がっこうというわくてはめてとらえるのではなく、学校がっこうわらないといけないのでは。そして、学校がっこうてさえくれれば、なにかできることはある。学校がっこうをどんどんひらき、応援団おうえんだんやそうともかんがえた」

卒業式の式辞しきじでは、修学旅行しゅうがくりょこうや、横浜よこはま移動いどう教室きょうしつ中に遭遇そうぐうした地震じしんなど、3年間ねんかん思い出おもいでかえった。そのあいだ佐藤さとうさんは何度なんど言葉ことばにつまった。しかしなみだせなかった。「いてしまったら、『十分じゅうぶん頑張がんばったんじゃないか』『やれることはやったじゃないか』と自分じぶん自身じしんってしまいそうで。約束やくそくたせなかったのに」

式辞しきじ最後さいごはこうむすんだ。「しあわせになってください」「どうぞしあわせな人生じんせいあるんでください」

巣立すだちちゆく生徒せいとかおおもうかかべながら。そして、午後ごご一人一人ひとりひとりかおて、そうつたえた。(山下知子やましたともこ

Vocabulary

Word (Furigana)JLPT LevelPart of SpeechMeaning
取材 (しゅざい)N2Nouncoverage, news gathering
含める (ふくめる)N3Godan verbto include
参加する (さんかする)N4Suru verbto participate
卒業式 (そつぎょうしき)N3Noungraduation ceremony
校長 (こうちょう)N3Nounprincipal
先生 (せんせい)N5Nounteacher
謝る (あやまる)N4Godan verbto apologize
式辞 (しきじ)N1Nounspeech, address
聞く (きく)N5Godan verbto listen, to hear
初めて (はじめて)N4Adverbfor the first time
東京都 (とうきょうと)N3NounTokyo Metropolis
豊島区 (としまく)N3NounToshima Ward
立つ (たつ)N5Godan verbto stand
中学校 (ちゅうがっこう)N4Nounjunior high school
(まえ)N5Nounformer
高彦 (たかひこ)N1NounTakahiko (name)
今年 (ことし)N4Nounthis year
3月 (さんがつ)N4NounMarch
語りかける (かたりかける)N2Ichidan verbto address, to speak to
卒業生 (そつぎょうせい)N2Noungraduate
全員 (ぜんいん)N3Nounall members
いる (いる)N5Godan verbto be, to exist
午後 (ごご)N4Nounafternoon
開く (ひらく)N4Godan verbto open
(だれ)N5Pronounwho
一人 (ひとり)N4Nounone person
取り残す (とりのこす)N2Godan verbto leave behind
学校 (がっこう)N5Nounschool
居心地 (いごこち)N1Nouncomfort
目指す (めざす)N3Godan verbto aim for
在任期間 (ざいにんきかん)N1Nounterm of office

Grammar and Sentence Structure

  1. 「卒業生全員がここにいるわけではありません。」

    • Explanation of grammatical points: This sentence includes the phrase “わけではありません,” which is a way to express a negative assertion or denial. It is often used to clarify that something is not the case or to emphasize a point.
    • Explanation of sentence structure: The sentence structure is as follows: Noun + Particle + は + Verb (present tense) + わけではありません. In this case, the noun is “卒業生” (graduates), the particle is “が” (subject marker), and the verb is “いる” (to be). The phrase “ここに” means “here,” so the sentence translates to “Not all graduates are here.”
  2. 「力不足だった、申し訳ない」

    • Explanation of grammatical points: This sentence includes the phrase “力不足だった,” which means “lacked power/strength” or “was inadequate.” The phrase “申し訳ない” means “I’m sorry” or “I apologize.”
    • Explanation of sentence structure: The sentence consists of two clauses connected by a comma. The first clause is “力不足だった” (lacked power/strength), and the second clause is “申し訳ない” (I’m sorry). This structure is commonly used to express regret or apology for a previous action or situation.
  3. 「『みんなが居心地のいい学校』を約束したのに果たせなかった。」

    • Explanation of grammatical points: In this sentence, the verb “果たせなかった” means “could not fulfill” or “failed to accomplish.” The phrase “みんなが居心地のいい学校” means “a school where everyone feels comfortable.”
    • Explanation of sentence structure: The sentence structure is as follows: Quotation + Particle + を + Verb (past tense) + が + Verb (negative potential form). In this case, the quotation is “『みんなが居心地のいい学校』” (a school where everyone feels comfortable), the particle is “を” (object marker), the past tense verb is “約束した” (promised), and the negative potential form verb is “果たせなかった” (could not fulfill). The sentence translates to “Although I promised ‘a school where everyone feels comfortable,’ I could not fulfill it.”

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